ごろごろ独学勉強部屋

資格取得や独学、通信制大学についての記事を書いています。

MENU

close
×

ペリリュ─楽園のゲルニカ (ヤングアニマルコミックス)を読む

本ブログ内に貼られた商品紹介リンクはアフィリエイトリンク(広告リンク)となっております。

※この記事にはプロモーション(Amazonアソシエイト)が含まれています。

8月ー終戦記念の日が近づいてきましたね。

今年の8月は、本屋で一度見かけてから気になっていた「ペリリュー 楽園のゲルニカ」を読みたいと思います。

 

最初見たときは、あまりにかわいい絵なんで「この絵で戦争物を?」と思ってしまいました。

小説、映像を通して戦争を知ってきた中で、この絵柄は違和感があり、「悲惨な戦場をファンタジックに描かれるのもなんだか…」という気分でした。

 

ある時、電子コミックで1~3巻まで無料配信されていたので軽く読んでみたところ、最初の印象がガラッと覆されました。

 

この絵柄だからこそ逆に重く感じる戦争の悲劇性。

かわいいキャラクターだからこそ、悲惨な場面でもギリギリ読むことができる「新世代の戦争物」。

なにより、脱帽したのが「物語」としての面白さです。

まず、キャラクターがしっかり立っている。主人公の田丸は読者共感型、頼りになる身近なリーダー吉敷君、一癖ある小杉伍長、英語のしゃべれる温和な軍人入来上等兵などなど。このキャラクターならではの行動、というのが納得ある描写で書かれているので、感情移入しやすくなっていること。

またストーリーの作り方もうまかったです。米軍から食料を盗む場面の冒険活劇のような、スリラーのようなドキドキ感。そして、終戦後の「投降」をめぐる日本軍の中での戦争。米兵との悲惨な戦闘ばかりではない(もちろんそちらも丁寧に書かれてはいますが)、物語としての面白さがありました。終盤数冊は一気読みしてしまうほどでした。

 

「投降」をめぐる話は、Amazonレビューを見ると長すぎるという批判もあるようですが、私はここが一番本作の盛り上がるところだろうと思いました。実際メインキャラの多くは終戦後の投降をめぐるゴタゴタの中で死んでいますし…。戦後も戦争が続いた、というのは東南アジア戦線の大きな悲劇性を表していると思います。

ただ、読み終わった後「ペリリューの戦い」をエンタメ的に楽しんでしまうことへの罪悪感のようなものが芽生えてきたのは、この物語が良くできているからこその皮肉かなと思いました。

 

作者はペリリュー生き残りの証言者の一人から以下のように言われています。

 取材が難しい方もいました。「戦争を体験していないあなたがなぜ戦争をかけるのか。漫画というのは軽いと思う」といわれました。

武田一義さんが語る漫画「ペリリュー」 3頭身キャラで描く理由|好書好日

実際の体験者からしたら、当然の感想なのかとは思います。漫画にするということは、やはり娯楽作品として消費されるということでもあります。

しかし、体験しないと描けないとなると今後戦争経験者がどんどん減る中で、「戦争は永遠に描けない」題材になってしまうんですよね。

私たちは大河ドラマで戦国時代や幕末をエンタメ的に消費していますが、あれだって当事者から見たら死者への冒涜かもしれません。

 

しかしドラマや映画、小説、漫画になることで今まで知られていなかったことが世間に広がり、そこから反省が生まれることもあるのかもしれない。

まだ生々しい記憶を抱えて生きている人がいる題材を、エンタメ的なものとしてあつかうのはすごく勇気がいることだし、批判されることもあると思います。

その中で、「ペリリュ─楽園のゲルニカ」を書ききった作者はすごいと思います。

 

にほんブログ村 資格ブログへ
にほんブログ村

↑お気に召したらどうぞクリックをお願いします。